「あのブランドの今発売されている時計と、昔の時計ではイメージがまったく違うのはなぜ?ブランドのロゴすら違うのはなぜ?」
時々こんな質問をいただくことがあります。
■ ブランド=会社ではないの?
そんな疑問が起こるのも当然。実は「ブランド名」は残っているものの、今では「実際にそのブランドを製造する会社は存在していない」場合が多々あるからなのです。
こう書いてしまうと語弊がありますが、昔はブランド名=会社名であって、Aというブランド名があったとしたら、Aという会社がその時計を製造していたものです。
ただそれが今では、A社のB部門がBというブランドを作り、C部門がCというブランドの時計を作っているといったようなことが多々あり、会社としては1社でありながら複数のブランド名で時計を製造していることがあります。
ブランドやメーカーに大きな変化が起こったのは、1970年代の電池式時計の台頭があった頃から。
今までの手巻き時計に比べると、オーバーホール等の維持費用がほとんどかからない上、一日の誤差がまったく無いわけですから、電池式のデジタル時計が流行らない・主流にならないわけはなかったのです。
それにつけて値段もびっくりするほど安かった、それがさらにどんどん安くなっていき、さらに科学や技術の進歩によっていろいろな機能が付いたわけですから、その頃には「機械式時計は無くなる」とまで言われていたものです。
そんな時代背景もあって、今まで機械式時計を中心に製造を続けてきたメーカーは大手や小さい会社を問わず、大きな選択を迫られることになります。
やめてしまうのか・それともデジタル時計を作り始めるのか。製造機器や施設の必要なデジタル時計を自社で急に開発するのはたやすいことではありませんし、今までやってきた作り方もあれば職人さんだっているわけです。そんな大きな時代のうねりの中、いろいろなメーカーが時代の流れに対応できずに、大手や中小を問わずどんどんと倒産していきました。
そんな倒産してしまった会社の中に、今でも「ブランド」として残っている会社が多々あったわけです。
■ ブランド名の復興
では倒産してしまったブランドや会社が今も存在しているのはなぜか?
それは時代こそデジタル時計時代へと移行をすることにはなりましたが、ブランド名を無くしてしまうのはもったいない・ブランド名にあやかりたい・利用したいと思うメーカーが存在したからです。
ブランド名には長年をかけて築かれた名前の持つネームバリュー(価値)がありました。
あくまで例えですが、「ロレックス」と聞くと、誰もが「高級時計だ・信用のあるメーカー」だと思うように、あるブランド名を聞いただけで、イメージがわく・ネームバリューがあったわけです。
こういった様々な思惑もあって大手時計メーカー・商社がすでになくなったブランドの復興に取り掛かります。無くなったブランドをできるだけ元に戻す形で復興させるところもあれば、ブランド名だけを利用して時計を作るところもありました。
するとデザインや文字盤に載るブランド名こそ違えど、作っているのは同じC社といったように、同じ時計でありながらケースや文字盤を変えることで違うブランドになっているという時計もあるのです。
するとどうでしょう?もともとそのブランドを製造していたメーカーと今製造をしているメーカーの接点というのは「ブランドの名前だけ」ということが起こってきます。
スタイルやデザインも踏襲しないわけですから、昔の時計と比べると共通点が無いのも当たり前なわけです。
アンティーク時計から時計好きになって現在の時計を買うとそんな流れも少しはわかるのですが、現在の時計から入ってアンティーク時計の世界に入ると、「どうしてこんなに違うんだろう?」と大きな違和感を感じてしまうことがあるのです。
現在の時計はこういったブランドの問題や、機械を製造するメーカーが統一されつつある現状もあり、アンティーク時計と現在の時計は同じブランドであっても・たとえ倒産しなかった会社であっても「まったく別物」と考えていただくほうが良いでしょう。
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